【乾物屋の知恵袋】乾し椎茸の天日干し(品質確かで味の良い国産原木栽培の椎茸)

matsusaku2010-07-29







乾し椎茸の天日干しについて

乾し椎茸は、昔から産地で生産者が炭火や熱風で乾燥させて作ってきました。
最近、「乾し椎茸は天日干しでないとまがい物」
みたいに思われている方が多いのですが、結論から言うと
調理する前に食べる分だけに日光に当てる
のが美味しくて最良な方法なのです。



◆天日干しとして売られている椎茸
袋に天日干し椎茸と書いてあっても、生の椎茸を最初天日で干しその後乾燥機にかけるか、乾燥させた後少し天日に当てたものがほとんどです。
冬の寒い時期に、農家の人が完全天日干しで自家用の干し椎茸を作る場合がありますが、干した後は色が黒くなり石のように硬くなってしまいます。



◆なぜ熱風乾燥させるのか?
昔から、乾椎茸は産地で熱風乾燥させて作られていました。
1800年頃には既に、焚火または炭火で乾燥するのが当たり前でした。
高温の熱風で乾燥させると、椎茸内部の分解酵素が活発になり、旨味成分であるグアニル酸が増えるのです。
今は生椎茸を採取直後に生産者が熱風乾燥します。(40〜55℃で15〜20時間)
その後、少し湿度のある温風で乾燥させることによって、風味を保ちながら乾し椎茸を仕上げていきます。

このような訳で字も『乾し椎茸』と書きます。
辞書を見ても『干す』は日光に当てること、『乾す』は水分をなくして乾燥させること、となってます。




◆天日干しのメリット。

お店で買ってきた乾し椎茸は、調理する前に1〜2時間日光あてることをおすすめします。
そうすることによってビタミンDの量を増加させることができます。
乾しいたけに含まれるエリゴステロールという成分は、紫外線によってビタミンDに変化します
ビタミンDはカルシウムを骨に吸着させる働きを持っています。




◆最初から天日干しにすることのデメリット。
原木栽培の椎茸は採取直後から腐敗が進み易く、天日でゆっくり乾燥させたのでは刻々と品質が劣化して、乾燥する前に腐ってしまいます。
また、うまみ成分のグアニル酸も60℃以上でないと多く生成されないのです。
通常の保管では、天日干しで生成されたビタミンD2は1カ月で半減すると言われています。


※椎茸を選ぶ時は、天日干しかということよりも、
『国産か?』 『菌床栽培ではなく原木栽培か?』 というところに注意してお買い求めください。


【御家庭で天日干しをする時は】
傘の裏側のヒダを上に向けて日光に当てる。
1〜2時間ほど必要に応じて、干してください。
湿ったた乾椎茸を乾燥させるときはカラカラ乾くまで天日干しします。

天日干しした椎茸はなるべく早くお召し上がり下さい。1ヶ月でビタミンD2は半減します。
再度天日干しすればまたビタミンD2が生成されます。




【美味しい乾し椎茸の戻し方】
1個丸ごとの椎茸を戻すとき一番おいしのは、冷蔵庫で一晩(8時間以上)かけてゆっくり戻すことです。水温5度くらい。
スライスした椎茸などは1時間くらいで戻ります。
ぬるま湯や砂糖をひとつまみいれると早く戻りますが、旨み成分のグアニル酸を破壊してしまう別の酵素も同時に働くため、低温で戻したときの約12%程度しか旨味は出ません。

なぜ、ゆっくり戻すと美味しいかというと、乾し椎茸の旨み成分はグアニル酸ですが、椎茸自体に元からあるわけではなく、乾した椎茸を水に戻すとき酵素によって生成されます。酵素の働きを活発にするには低温で戻し、充分時間をかける事が必要なのです。ちなみに温度によるグアニル酸は生成料は、高温戻しが100g中0.5mg/、常温戻しが20mg、低温戻しが160mgという実験結果があります。




【裏技】低温でおいしく早く戻す方法として、椎茸を1時間水に浸けておき、ある程度柔らかくなったら包丁で調理するくらいの適当な大きさに切るか切れ込みを入れ、また水に戻してその後30分くらいおくと、通算1時間半で戻すことが出来ます。




【どんこ椎茸とは】
どんことは冬蝱という字を書き、冬場にゆっくりと育ったシイタケを乾したもので、肉厚で丸みがあり大きさは3〜5cm、カサの縁が十分巻き込んでいるもの。
身が締まって弾力があり、しっかりした味と食感が特徴です。


【日本産と中国産】
日本産の椎茸は、クヌギ・コナラなどの原木が使われ、しいたけ菌を植え込んだ後、森林の中で自然の精気と木もれ日を受けて1年半〜2年間もの年月をかけて栽培されます。
一方、中国における栽培方法は、菌床栽培(きんしょう)といって、オガくずや棉実がら、トウモロコシのからなどにフスマ、砂糖などの栄養剤を加えて固めた培地に菌を植えて栽培されます。栽培期間は100〜120日程度です。
促成栽培で作られる中国産よりも、時間をかけてつくられる日本産のほうがおいしいのはこのためです。




【乾し椎茸の種類と呼び名】
乾しいたけは、一番肉厚ものを冬茹(どんこ)
次が、厚肉
少し薄いものを、香信(こうしん)と呼びます。

重要なうま味成分グアニル酸グルタミン酸の量は、ほとんど変わりませんが、歯ごたえ、舌ざわり、のど越しが異なります。「どんこ」は傘の肉が厚く全体的に丸みを帯びていますが、「こうしん」は傘の肉が薄く扁平な形をしています。また、「どんこ」と「こうしん」の中間の大柄なものを「こうこ」と呼んでいます。




【乾し椎茸の栄養】
乾しいたけは、他の食品に無いビタミンDや、欠乏しがちな食物繊維、ミネラルが豊富に供給されます。

ビタミンDの働き
キノコ類にはビタミンDが含まれていますが、特に乾しいたけには生鮮キノコ類の約9倍のビタミンDが含まれています。これはしいたけに含まれているエリゴステロールと言う成分がビタミンDに変化するためです。
乾しいたけは、炭水化物(糖質と繊維質)とタンパク質が主な成分ですが、カルシウム、鉄分などの無機質やビタミン類なども含まれており、野菜には含まれていないビタミンDを多く含んでいます。ビタミンDは、腸からカルシウムの吸収、骨へのカルシウムの吸着など体内でのカルシウム代謝に大きな役割を果たしています

◆血圧、コレステロール値につい乾しいたけは、血圧やコレステロール値を下げると言われていますが、他のきのこ類にはないエリタデニンという特有の成分が含まれているからです。
エリタデニンは血液中における悪玉コレステロール値(LDL)を下げ、善玉コレステロール値(HDL)を高め、総コレステロール値を下げる働きをします。
血圧が気になる方は、就寝前に乾しいたけを1個水洗いし、100〜150ccの水の入ったコップに入れ、冷蔵庫に朝まで入れておき、起床したらそのしいたけの戻し汁を飲んでみましょう。血圧を下げるのに効果的です。



【乾し椎茸の香り】
乾しいたけは、レンチオニンという芳香成分により特有の香りがします。
レンチオニンは、乾燥過程や水戻し中に酵素の作用などにより、しいたけに含まれているレンチオニン酸から生成されます。この芳香成分は、高い温度よりも低い温度で水戻しをした方がより多く、また調理の段階においても生成されますが、30分以上煮るとせっかくの芳香成分のほとんどが分解拡散してしまいます。
したがって、香り高い美味しいしいたけを味わうためのポイントは「水戻しは低い温度」「調理は短時間」で行うことがコツです。




【乾し椎茸の保存と賞味期限】
1年間密閉した状態であればもちろん、開封後は乾しいたけの保存にあたっての大敵は湿気ですので、密封容器に入れて冷蔵庫のような暗冷室で保存するのが良いでしょう。
保存性に優れた乾しいたけですが、油断をしていると、アミノ酸と糖質が反応して色がつき、香りも悪くなってしまいます。



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最近は、テレビの影響で『天然』『国産』『無添加』『手作り』とうたえば物が売れる傾向にある。食品などは特にイメージ情報に惑わされず、納得して購入したいものである。